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人としての評価と法の無力感!

  • 執筆者の写真: Konno.y
    Konno.y
  • 2017年12月5日
  • 読了時間: 4分

更新日:2018年10月6日

今日は、人としての評価と法の無力感! と言う事について相談があった「人としての行いと法の立場から見た法の無力感」についてお話しをしていきたいと思います。


とある現場で、相談者の同僚が大型トラックの荷台から転落した際の事である。


相談者が見ても同僚が腕を強く打った事は外から見ても打撲だと分かる程であった。また、頭を地面に打ったのか、頭部から血を流していたと言います。


その現場に社長ががいた為、すぐに社長の車に同僚を乗せて相談者は送り出したそうです。

 

社長は病院に行くと言っていた為、相談者は安心して、労働を続け労働終了の定時まで働き、その後、寮へと戻ったそうです。


寮に帰ると、トラックから転落した同僚が包帯を巻いて部屋にいた為、相談者は同僚に「大丈夫か?」「医者に行って見てもらったか?」と聞くと、同僚は、「社長に現場事務所まで送ってもらい、少し様子を見るように」と言われ、休んでいたが、「頭が痛くてどうしようも無い為」事務所の人に寮まで送ってもらったのだと言う。


なお、包帯は自分で巻いたと話した。


相談者は「なぜ病院に行かなかったのか?」と同僚に聞くと「健康保険証は600km離れた実家にある為、病院に行けなかったのだ」と言う。


同僚は、600kmも離れたところから出稼ぎに来ていたのである。


次の朝、同僚を見ると「腕は腫れ上がり、体は震えが止まらない状態」であった為、相談者は同僚を病院に連れて行く為、600km離れた同僚の実家に車で向かい、無事に同僚を病院に連れて行く事ができたのである。


その後、同僚は回復したと話されました。

 

以上で、事の経緯について話しをしましたが、ここからが本題である相談者からの相談内容になります。


相談者は、同僚を病院に連れて行く為に会社を5日間不在にした。休んだ訳です。


相談者は、この5日間に対し会社に「労働賃金の請求」が出来るか? と言う相談でありました。


労働法でこの事案を照らして見た場合。

労働者は使用者との労働契約で取り決めた労働の内容に従い、労働の提供を行う。

そして、その労働の対価として労働賃金を頂く。と言う事になります。


したがって、この事案を見ると「労働の提供はなされていない」と考えられる為、「労働賃金は発生しない!」と考えられる。


(ノーワーク・ノーペイの原則)労働契約法第6条が定める労働契約は、労働者による労務の提供と、使用者による賃金の支払との相互契約です。(双務契約とも言う)

 

したがって労務の提供が履行されず、それが労働者の責任に帰する場合は、対応する賃金の支払義務も原則として発生しません。


これを「ノーワーク・ノーペイの原則」といいます。簡単に言うと「労働しなかった場合は、賃金を払わなくて良い」と言う事になります。


仮に、会社の指示で病院に行った場合は「労働である」とも考えられるが、この事案では会社の指示はなされていない。法的に見た場合はそのようになる。


しかし、人として見た場合は同僚の怪我を心配して病院まで連れて行った行為は、「立派」であると思います。


人としての行いは、非常に素晴らしく立派であるが、法として見た場合は、何の対応もなされず無力感でたまらないと言う事です。

何ともいたたまれない気持ちになります。


それでは、これを別の視点から見た場合はどうなるのか?


会社は労災隠しと言う事になる! また、労働者は頭を打っている事からも身の危険も十分考えられたと言えます。


また、その状態を放置して、労働者を病院に連れて行かなかった行為は、非難されるべきと言えます。


この状況から「使用者の安全配慮義務違反」と判断される可能性もある。

 

もし、怪我をした労働者が最悪亡くなってしまう事や、体に障害を残すような事にでもなれば、「大変だ!」では済まされない事であったと考えられる。


この様な事にならない為に、会社は「人命第一」に考え、労働者が怪我をした場合は、怪我の程度に関わらず、現場で判断せずに、まずは病院に運び診察を受ける事で、事態を最小限にとどめる努力義務を負っている事を自覚してもらいたい。


周りの労働者・同僚・先輩・上司・管理者・経営者は自分の立場もあろうが、やはり人命第一に考えてもらいたい!

 

もし、怪我をしたのが自分であった場合は、何よりも優先して病院に連れて行ってもらいたと思うはずである。


法の遵守(コンプライアンス)は人ごとでは無い。まさに自分が守るべきだと自覚して頂き、会社も労働者も考えてもらいたい。


相談者も、会社の責任に於いて「労災として病院に連れて行く事を選べば、遠くまでの距離を走らずに、もっと早く同僚を病院に連れて行くことが出来た事案であったと考えられます。


難しい問題ではあるが、少しの勇気と責任感で立ち向かってもらいたいと思います。

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